ワイエルシュトラスの定理の必要性

(収束する数列は収束する部分列を持つボルツァーノワイエルシュトラスの定理とは異なります。)

こんにちは、最近は実数の性質について今一度勉強しているため、自分の学習のためにも今回はワイエルシュトラスの定理について説明したいと思います。 

実数の定義

実数の定義としては、

  • 四則演算の公理(10個)
  • 順序の公理(6個)
  • 連続性の公理(1個)

の3つを証明なしで認めてしまえば、実数の諸性質をほとんど証明できます。公理の内容は、僕たちが普段扱っている実数が満たしている性質を認めているものになります(交換法則や結合法則、0の存在など)。ちなみに自然数などについては既知とします。

実数の連続性公理として

  1. デデキントの定理
  2. ワイエルシュトラスの定理
  3. 有界な単調数列の収束
  4. 区間収縮法

の4つのうちどれかを公理として取れば、他の定理をもれなく証明できます。

デデキントの定理を公理として認めたとき、2→3→4の順番で証明できるため、最初に証明できるのはワイエルシュトラスの定理です。

ワイエルシュトラスの定理の主張と必要性

ワイエルシュトラスの定理の主張は、

『数の集合Sが上に有界⇒Sは上限を持つ』というものです。上限とは上界の最小元なので、いいかえれば、『数の集合Sが上に有界⇒minU(S)、つまり上界の最小元が存在する』といえます。

上界の定義からすれば明らかに成り立ちそうですが、実数Rはその切断(A,B)により、Aが最大値をもつか、Bが最小値をもちます(デデキントの公理)。

よって、数の集合Sに関して、上界全体の集合とB=U(S)とその補集合Aを切断により分けると、これは実数の切断であるから、上界全体の集合U(A)が最小値をもつか、Aが最大値を持つという2パターンが考えられます。ワイエルシュトラスの定理は上に有界なときの、実数の切断は、上界全体の集合U(A)が最小値をもつという1パターンしかありえないという保証を与える点で重要です。

証明

実数の切断を、Sの上界全体の集合B(=U(S))と、それ以外の集合A(=Bの補集合)により定める。

つまり(A,B)により、実数を切断する。

この時、デデキントの公理から次の2つのパターンが考えられます。

Aが最大値をもつ(かつそのときBは最小値をもたない)か、Bが最小値をもつ(かつそのときAは最大値をもたない)。

このとき、Aが最大値をもつと仮定する。

α=maxAとする。α∈Aより、αは上界の一つではない。よって、任意の上界βをとってきたとき、

α<βである(α=βはα∈Aかつ、β∈Bより起こり得ない)

このとき

α<(α+β)/2<β

が成立するが、これはおかしい。

任意のβに対して、

(α+β)/2<β

が成り立つため、(α+β)/2∈Aである。しかし、αはAの最大元であったのに、α<(α+β)/2∈Aとなり、αより大きいAの元が存在してしまう。

よってα=maxAは成り立たないため、デデキントの公理から、切断のパターンとして、Bが最小値をもつ場合しかあり得ない。

ゆえにα=minBより、上界の最小元=上限の存在が示された。